数値例1. 正規モデル .球体 .ただし .観測データを と すると, である. が仮説 を棄却するほど十分に大きいといえるか?
このとき とサンプルサイズを変化させるとスケール のブートストラップ確率は
と変化する.特に は1%以下であり,仮説を棄 却する十分な証拠があると判断する.
この簡単な例では が非心カイ二乗分布に従うことを利用して厳密に不 偏な確率値が計算できる.この値は であり,先ほどの の値は厳密値から大きく異なっていたことになる.
一般に 値から 値 を定義する.ただし は標準正規分布関数の逆関数である. 11節の議論によって, と の関係は 次式で表現されることが示される.
ただし は両辺の誤差が であることを表す.係数は幾何学 的な量を反映しており, は と の距離を表し, は の曲率を表す.この理論式を実際に得られたブートストラップ確 率に当てはめて, と を回帰係数として推定すると, が得られる.
実は不偏な確率値の 値 は
を満たすことが示せるので, , と定義して,先ほど推定した を代入すると,
が得られる.以上のようにスケールを変化させた複数個のブートストラップ確率 から高精度の確率値を計算する手続きをマルチスケール・ブートストラップ法と いう(Shimodaira 2002).正規モデルを仮定すると,任意の に対して は3次の精度になる.
を縦軸, を横軸にプロットすると,次式に示され るように, における曲線の傾きが になる.
したがって,この方法はスケールを変化させたときのブートストラップ確率の変 化率から高精度確率値を計算しているといえる.