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加速定数

数値例2.$ X_i$ が期待値$ \mu$ の指数分布に従うとき, $ Y=\sqrt{n}\bar X$ はガンマ分布($ p=1$ ,指数$ n$ )に従い,期待値 $ \eta=\sqrt{n}\mu$ である.仮説は $ \eta\le\sqrt{n}$ とする.$ n=10$$ y=4.968$ とすれば, $ y-\sqrt{n}=1.806>0$ であり $ y\not\in{\cal R}$ となる.実はちょ うど $ \hat\alpha_\infty(y)=0.05$ となるように値を選んである.

数値例1と同様に計算を行うと,

$\displaystyle \tilde\alpha_1(y,\tau_1) =
0.2990,\, 0.1875,\, 0.1115,\, 0.0622,\, 0.0322
$

から $ \hat v= 1.328, \hat c=-0.110$ が推定される.確率値は

$\displaystyle \hat\alpha_1(y)=\Phi(-1.328-0.110)=0.0753
$

である. $ \hat\alpha_0(y)=0.1115$ に比べれば $ \hat\alpha_\infty(y)=0.05$ に 近いものの,必ずしも精度が高くないことが分かる.

前節では正規モデルを仮定していたが,一般の指数型分布族では

$\displaystyle \tilde
z_1(y,\tau_1) \doteq \frac{\hat v- 2 \hat a \hat v^2}{\tau_1} + (\hat
c-\hat a)\tau_1, $

と書ける.ただし$ \doteq$ は両辺の誤差が$ O(n^{-1})$ で あることを表す.$ \hat a$ は加速定数と呼ばれ,確率モデルの性質と $ \partial{\cal R}$ から定まる量である.正規モデルでは$ Y$ の分散行列が単位行列に 固定されていたことが本質的であり$ \hat a=0$ であった.一般の指数型分布族で は, $ \partial{\cal R}$ の法ベクトル方向に関して,$ \eta$ を動かしたときの分散の 変化率が$ \hat a$ に反映されている.

Efron (1987)のABC法によれば,3個の幾何学的な量 $ \hat v, \hat c, \hat a$ を用いて 不偏な確率値は

$\displaystyle \hat z_\infty(y) \doteq
\hat v- \hat c+ \hat a(1-\hat v^2)
$

と表現される.一方,前節の方法で計算した確率値は

$\displaystyle \hat z_1(y)\doteq \hat v - \hat c+ \hat a(1-2\hat v^2)
$

であり, $ \hat a \hat v^2=O(n^{-1/2})$ だけ誤差が ある.これを補正するために,$ \hat a$ を推定する必要がある.




平成16年7月12日